第5章 興奮する体

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「使えるという程ではありませんが、基本は習っております」 「マジで? 逞しいなあ。またムカデが出たらお貸ししますわ」 感心している四郎に向かって、三郎は眉を顰めた。 「情けねーな。自分でやれよ。つうかそれ、案外軽いんだな」 「アホか重いわ。持ってみ」 あの次郎の細い腕で扱えるのだから大した重さではないはずだと思って受け取った三郎は、予想の倍以上の重さによろけた。 「な? 次郎ちゃんああ見えて怪力やで」 悔しいが、とても自分には斧を扱えそうにないし、恐らく次郎は剣も使いこなせるのだろうと考え、三郎は唇を噛みしめた。 「いつまでふざけている。谷へ入る。気を引き締めろ」 また一郎の喝が飛んだ。一行はそれぞれの武器を構え、谷の奥へ進み始めた。 「暑いな」 着物の襟に手を掛けながら、四郎が呟いた。 谷全体に熱が籠っている。それに甘い匂いがする。 「何も出て来ないじゃないか」 段々濃くなる匂いに鼻を覆いながら、三郎が呟くと、先頭を歩いていた一郎が止まった。 「五郎を囲め。大蛇が来る。2匹――いや、3匹だ」 指示される前に弓を構えていた次郎が矢を放つと、少し離れた場所で大きく草木が揺れた。彼は更に別の方向にも矢を放った。そこでも大きく草木が揺れたが、今度はその揺れが近付いて来た。
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