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「何突っ立っとる! 逃げるで」
四郎に強く腕を引かれた時には三郎の足元まで赤い水が流れてきていたが、それは三郎の足に触れる前に大きな芋虫に吸い取られた。襲いかかって来ていた獣たちは、死んだ親にすがるように木に向かい始めた。他にも多くの虫や蛇が5人に構わず赤い水を目指して大移動を始め、上空からも鳥のような生き物や、例の赤バエが降りてきた。
「木を倒したら皆勝手に死ぬんじゃなかったのかよ」
「いずれ死ぬ。だがすぐにはむしろ思う存分赤い水を吸って強くなる。奴等が水を吸い尽くす前に次へ移動する」
そう告げると一郎は走り出し、従うしかない三郎も他の戦士達と共にその後について行くと、すぐに次の井戸の木に辿り着いた。襲ってくる動物は最初の木より少なく、しかも大半次郎が矢で倒してしまったし、井戸の木は見えたと思った瞬間にもう一郎に切られていた。その次の木も同様に片付いてしまうと、三郎は、ほとんど剣を振るう機会がないことに苛立って来た。
そして4本目の木。三郎にもようやく近付く気配がわかるようになっていた。木の前に立つ獣の気配も感じる。しかし、次郎は矢を打たなかった。
「なんで攻撃しないの?」
すると次郎は三郎の質問には答えず、一郎に向かって尋ねた。
「いかがいたしましょう」
「うん……」
一郎は唸って足を止めた。
「他の木を先に――」
「いや。奴はここの木と繋がっている。これ以上放置すれば龍よりやっかいな猛獣に育つ」
一郎は、次郎にそう答えると、三郎と四郎に説明した。
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