第1章 火照る体

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光は男の口を塞ぎ、やけになって舌を絡めると、ボロボロと涙を零し始めた。 光の涙を頬に受けた男は、虐めたことを謝るように腰を動かし、光が望む熱い体液を彼の体の奥にたっぷりと吐き出した。すると飢えていた体はすぐにそれを吸収し、次を求めた。それを数回繰り返すと、光はようやく落ち着きを取り戻した。 「はあ……もうくたくたですよ」 厚い胸板を上下させながら男はそう呟き、光の顔を見た。 満ち足りた光の顔は透き通る白に戻り、その瞳から涙も消えていたが、表情は暗かった。無言で服を着始めた光に、男は言った。 「もう少しの辛抱ですよ。旦那様も、最後の数日は激しかった」 それは13年前の話だ。 男が旦那様と呼ぶ光の父は、行方不明になった。 何故、何処へ消えたのか誰にもわからないまま月日は過ぎたが、つい最近、光はこの男から父に託されたという手紙を受け取った。その手紙には信じられないことが書かれていたが、それは今光の身に起こっていることの説明としては納得のいく話だった。だから我が身の変化に苦しんでいた光は、迷うことなく手紙に書かれた父の指示に従った。山に行くのも男に抱かれるのも全てその為だ。 光は無言のまま身支度を終えると、男の家を出た。 外はもうすっかり暗くなっていた。美濃家の窓に明かりが見える。母はきっと夕飯の支度をして待っているだろう。けれどもう一刻の猶予もない。 (母さん、ごめんなさい) 胸の内で母に詫びながら自宅の前をそっと通り過ぎると、光は再び臥龍山に向かった。
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