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しかし、木は硬くなかなか奥に達しない。しかも動いて振り払われそうになる。すると、五郎が三郎の体を背後から包んだ。
「一緒に押すぞ。せいの!」
五郎の力が加わると、剣は一気に木の中へ入り、中心に達した。木は断末魔の叫びを上げ、刺された場所を中心にひび割れ始めた。
「剣を抜いて逃げろ!」
ようやく巨大な獣を倒した一郎の指示で三郎と五郎が剣を引き抜くと、赤い水が噴き出した。五郎が三郎を抱え込んで地に伏せた瞬間に、木は爆発するように裂けた。赤い水が大量に降り注ぎ、五郎はその水から三郎を守った。
「大丈夫か?」
三郎に掛からないように反対方向に頭を振って水を払いながら、五郎が言った。
「ああ……」
五郎は背中一面に赤い水を浴びたようだ。なんとなく息苦しそうな五郎に向かって、三郎は少し申し訳なさそうな顔をした。
「撤退だ。急げ」
一郎は戦士を引き連れて赤い谷の入り口に戻ると崖に向かって刀で何か描いた。すると印を書かれた場所が光り始めた。
「五郎、先に行け。おまえ達も続け」
五郎は一郎に頭を下げると光の中へ入った。次郎、四郎も後に続いた。
「早くしろ。これ以上世話を焼かせるな」
怒鳴られた三郎、そして最後に一郎が光に入ると、崖は元に戻った。
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