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「一郎様!?」
2人は驚いて離れたが、五郎の体は興奮したままの状態だった。一郎はそれを見てフッと笑うと、慌てて裸を隠そうとしている四郎に近付き、手を止めさせてその肌を眺めた。
「おまえが相手をしてやっていたのか。牡丹か。艶やかだな」
「あっ……一郎さ……」
一郎は、四郎の体に咲いた花を撫でながら、部屋を見渡して尋ねた。
「三郎はどうした?」
「さあ……逃げたんやな――ん……」
一郎は、恥ずかしそうに俯いたまま答えた四郎の顎を引き上げて口付けてから、彼を解放した。
「邪魔したな」
五郎の部屋を出た一郎は、三郎の部屋と四郎の部屋、そして訓練場や風呂場も確認したが、三郎はいなかった。それに剣もない。
「あのバカ、まさか――」
一郎は刀を手に城を出ると、赤い谷へ急いだ。
谷はうんざりする程大量発生した赤蠅に覆われていた。耳障りな羽根の音と悪臭に眉を顰めながら、一郎は殺されたばかりの死体を目印に三郎を捜し、谷の奥へと進んで行った。
生き物の気配が全くない。ことごとく切り殺されている。
(全部三郎が?)
一郎は獣の死骸を拾い上げて断面を見た。荒い断面だが、剣の仕業に間違いない。暫く進むと井戸の木があったが、それは滅多切りにされていた。
「あいつ……」
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