第1章 火照る体

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一方、三郎は家に戻っていたが、気持ちが収まらず竹刀を手に庭に出て素振りをしていた。 三郎の家は道場だったので、物心ついた時にはもう竹刀を握っていた。 幼い三郎に剣道を教えたのは父だ。父は強く逞しく、そして優しかった。自分もいつかこんな男になる。幼心にそう決めて三郎は稽古に励んだ。 でも、その父はもういない。三郎の父も13年前に行方不明になった。 先に行方不明になったのは光の父の方で、三郎の父は彼を捜しに出掛けたのだが、やはり帰って来なかった。臥龍山に向かうのを見たという者がいて山を捜索したが、2人の姿も遺留品も何一つ見つからなかった。 嘆き悲しむ母に、三郎は誓った。父に代わって母を守る、その為に父よりもっと強くなると。その後道場は人手に渡ってしまったが、三郎は誓いを守る為に一層稽古に励んでいる。 「三郎、ご飯よ」 母の声を聞いた三郎は素振りを止めて家の中に戻ろうとしたが、途中で立ち止まり腕を押さえた。 「――つっ!」 腕に突然、鋭い痛みが走ったのだ。虫にでも刺されたかと思ったが、その刺さった何かを力尽くで引っ張り皮膚を裂くような痛みが続き、三郎は悲鳴を上げて蹲った。 「どうしたの?」 驚いた母が飛んで来ると、三郎は腕を押さえて呻いた。 「腕が痛い」 「何処かにぶつけたの?」 「わかんない。急に――い、痛い!」 「見せてみて」 三郎が痛みに耐えて抑えていた手を外して見せると、母はあっと息を飲んで後退った。 「――何? どうしたの?」
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