第6章 もっと強く

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「え、俺……」 訓練場から部屋に戻って剣を置いた。 その後五郎の部屋に向かったはずだが、そこから先の記憶がない。 「覚えてないんか? おまえ、勝手に赤い谷行って暴れ回った挙げ句ぶっ倒れて、一郎さんに拾われて帰って来たんやで。もう3日前の話やけどな」 「3日!?」 三郎は驚いて体を起こした。特に何処か痛いとか、気分が悪いとか、そういったことはない。普通に眠って目覚めた朝と変わらない。 「他の奴等は赤い谷へ行ったの?」 「あそこはもうすっかり片付いた。今日は皆さん灰色の沼にお出かけや。帰って来たら、ご迷惑かけました、もう大丈夫ですってちゃんと挨拶しいや」 3日も寝ていたなんて信じられない。ずっと戦っている夢を見ていたが、眠る前にまた赤い谷へ行ったというなら、半分は現実だったのかもしれない。三郎は立ち上がり、剣を手に取った。 「待ってないで、その灰色の沼って所に行けばいい」 「無理や。場所がわからん。それに待てって命令やし」 「なんだよ、使えねーな」 「アホか、おまえが使えんから俺までお留守番になったんやろ」 そう言われると返す言葉がなくて、三郎は黙った。 三郎は、あの日残った井戸の木や獣達を自分一人で倒したことを記憶していなかったし、一郎は詳しいことを話さなかったので四郎もそのことを知らない。 三郎はやけになって呟いた。
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