230人が本棚に入れています
本棚に追加
痛むのは上腕の外側だ。暗いし自分ではよく見えない。三郎は転がるように家の中に入り、鏡に腕を映してみた。
「――え?」
それを見た三郎は、驚いて一瞬痛みを忘れた。鏡に映し出されたのは傷でも痣でもなく、くっきりと赤く刻まれた絵だった。見ている間に更に新たな赤い線が走り、その絵は完成された。
剣に巻き付いた龍。
いや、よくみると剣は龍を貫いている。
剣に串刺しにされた龍というのが正しいようだ。
「何これ……」
まだ腕に痛みは残っているが、絵が完成すると同時に耐え難い程の鋭さではなくなった。三郎が母を振り返ると、母は呆然と庭に立ち尽くしたままだった。
「母さん、大丈夫?」
母は我に返ったように三郎と目を合わせたが、すぐに俯いてしまって呟いた。
「本当だったのね……」
諦めたようにため息をつくと、母は部屋に入ってきて三郎の前に座った。
「何のこと? 母さん、これが何だか知ってるの?」
腕を突き出し問う三郎に、母は答えた。
「戦士の証。そう聞いたわ」
「戦士? 聞いたって誰に?」
「あなたのお祖母様からよ」
最初のコメントを投稿しよう!