第6章 もっと強く

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「どうした。早くしろ」 「う、うん、わかったから一人でやらせてくれる?」 一郎は俯いた三郎の耳がほんのり赤くなっていることに気付いて、思わずフッと笑ったが、放してやった。 「光が飛び出す瞬間の反動に気をつけろ。この時動くと軌道が狂う」 「はい」 珍しくきちんと返事をした三郎は、改めてしっかり剣を握りしめ、光を放った。動きを意識しすぎて力が弱まり沼にまで届かなかったが、光は真っ直ぐ飛んだ。もっと遠くへと思うと今度は軌道がズレる。三郎は苛立って何度か舌打ちしたが、根気よく投げ続けると、ついに光は沼に届いた。 「やった!」 三郎は喜んだが、一郎の時と違って、沼の中からは何も飛び上がってこなかった。 「――あれ?」 「当たらなかったようだな。気にするな。いきなり全部当てられるわけがない。その内何処に打ったらいいかわかるようになる」 「その内って……」 もっと早く強くなりたい。一時も早く光を助けたい。 三郎はもどかしくてため息をついた。一郎は、そんな三郎に構わず城に帰る印を刻んだ。 「帰るぞ」 「え、もう少し――」 「ダメだ」
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