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一郎は三郎の腕を掴んで印に入った。一瞬で城に戻ると、一郎は三郎に命じた。
「風呂に入ってすぐ休め。明日は一日中あの作業を続けることになる」
ずっと眠っていた三郎は、まだ全然眠くない。けれど久しぶりに体を動かして疲れてはいたので、黙って従うことにして武器を置いてすぐ風呂場に行くと、頭から打たせ湯を浴びながら沼でのことを考えた。
(なんであの時、赤い水が欲しいなんて思ったんだろう)
一郎に井戸の木を切り倒したいと念じろと言われて木を頭に描いた時、確かに感じた衝動。その意味を知りたくて記憶を探っても、夢だったのか現実だったのか定かではない断片的な絵しか出て来ない。
(まあいいか。お陰で技一つ覚えたし)
打たせ湯から離れて湯船に入ると、風呂場の戸が開いた。
一郎かと思ったら、入ってきたのは次郎だった。
「失礼します」
「あ……どうも」
三郎は、長い髪を束ねながらこちらに向かってくる次郎から視線を逸らしたが、次郎はかけ湯を浴びるとすぐ隣に入ってきた。
「お疲れ様でした。沼はどうでした?」
「え、ああ……まあまあです」
「まあまあって、何がです?」
三郎は次郎から顔を逸らそうとしたが、次郎はそれを許さず、追いかけるように体をねじり正面から三郎を見詰め続けた。
「何って……すみません、俺、よくわかんないです」
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