第6章 もっと強く

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「は? 何言ってるんですか。俺男だし、一郎だって――」 「まだ気付いてないの?」 少し驚いたようにそう言うと、次郎は片手でしっかり三郎の肩を抱いたまま、背中側の手を下へ滑らせた。手が背中を滑っただけで、三郎は体をビクンと震わせた。 「以前からこんなに敏感だったわけじゃないでしょう。それに……ここがすっかり変わっているはず」 次郎の指が尻の下まで滑り落ち、その奥の粘膜に触れた。 今まで何か入れたことも、入れられるなんて想像もしたことのない場所なのに、そこはまるで待っていたかのように次郎の指を受け入れた。 「あっ……何……?」 「この世界の狭間では、私達は男であり、女でもある。何故なら――」 三郎の全身に咲き始めた菊の花を眺めながら、次郎は指を動かし続けたが、急に指を抜いて三郎から離れた。突き放された三郎が呆然としていると、一郎が風呂に入ってきた。 「一郎様、お疲れ様です」 「ああ」 一郎は湯船から出ている三郎の肩に咲いている菊の花を見たが、何も言わずに体を洗い始めた。三郎はその間に湯船を出て、風呂場から逃げ去った。それを見送った一郎は、湯船に入って来て次郎の腰を抱き寄せた。 「大浴場にいらっしゃるとは、珍しいですね」 「ああ。たまには他の者達と風呂に入ろうと思ったが、結局おまえだけか」 「――すみません」
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