第6章 もっと強く

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翌日、5人揃って灰色の沼に向かったが、四郎は気が進まないらしく、一番後ろを歩いていた。 「どうした、四郎?」 心配して尋ねる五郎に向かって、四郎はため息をついた。 「沼って、投げ技使うやろ? 俺アカンわ。当たる気しないゆうか……五郎ちゃん流れ弾に気いつけてや」 それを聞いた三郎は、生意気な顔で笑った。 「へー四郎、投げ技苦手なんだ」 「そういうおまえは出来るのか?」 「出来るよ。昨日覚えた」 「昨日一日で? 嘘や」 「本当だよ。ねえ一郎?」 普通はもっと時間が掛かるらしいと知った三郎が得意気に確認を求めると、一郎は小声で呟いた。 「正確には5日だ」 あの赤い谷での経験とそれをしっかり体に記憶させた睡眠が三郎の能力を飛躍的に向上させたに違いない。けれどその話をすると、今後また三郎は勝手に行動するだろうし、他の戦士も抜け駆けしようとするかもしれない。だから一郎は、あの谷で残りの木も獣も全て三郎が倒したということを誰にも話さなかった。一郎は調子に乗っている三郎に釘を刺した。 「昨日はあえて浅い場所にしか打たなかったが、今日はもう少し深い場所まで攻める。一撃で仕留められない敵が反撃してくる可能性がある。既に話した通り、あの沼に引き込まれたら命はないと思え。五郎には念のため赤の拠点への転送紋の前で待機して貰う。五郎、危険を感じたら、おまえの判断で戦士を投げ込んで構わない」
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