第6章 もっと強く

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三郎は次郎の視線を感じて顔を向けたが、昨夜の事を思い出してすぐに目を逸らして呟いた。 「わかったよ。俺と四郎が交互に打てばいいんだろ? とっとと始めようぜ」 4人は沼への攻撃を始めた。 三郎は昨日より上手くはなったが、光の球が沼に落ちても何も上がってこないことが多かった。四郎の球は沼に落ちれば大量に仕留めることが出来るが、沼まで届かなかったり脇に逸れてしまうことも多かった。 「俺等アカンな。2人足しても次郎ちゃんの足元にも及ばない」 次郎は一度に大量の矢を放ち、一本も外さない。そして時折矢が数本刺さった大物が舞い上がり砕け散る。 「一郎さんは何してはるんやろ?」 一郎は昨日三郎に見せたのとはまるで違う太い光を放ち続けていた。光は力強く沼に入っていき、小さな獲物がはじき飛ばされはするが、本格的な当たりはなく消えて行く。落ちこぼれ組のようにただの失敗とは思えず不思議に思って眺めていると、一郎はまた光を放った。それもまた消えると思った瞬間、沼の底から低いうなり声が響いてきた。それは沼全体を揺らし、戦士達が立っている地面も小刻みに震え始めた。 「退け!」 一郎が叫んだ時には、もう立っているのがやっとの程の揺れに変わっていた。戦士は皆急いで赤の印に向かったが、四郎はふと立ち止まり振り返った。すると沼の水が噴水のように跳ね上がり、大きなワニのような生き物が顔を出し、口を開くのが見えた。 「四郎!」 思わずその場に立ち尽くした四郎は、五郎に抱えられて逃げ切った。全員赤の拠点へ無事転送され紋が閉じるのを確認すると、一郎は戦士達に告げた。
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