薙《なぎ》

2/4
前へ
/4ページ
次へ
随分物騒な夢だと心の中で談笑した。 「もうひとりは他人なのか?」 「そうだけど、冷静だね。」 その声には少し震えを感じた。やけにリアルな怯えが感じ取れた。 「何回このゲームをしたんだ?」 口振りからしてこのことには慣れてることは分かる。 「そうだな、もう20回程になる。殺した数はもう少し多い。相手も弱いし、このゲームは勝てるんだ。まあそれも対象が兄貴でなかったらだけど。」 「それって、おれを殺さないと勝てないのか?」 「ああ、その通りだ。」 そのときおれはゾッとした。シンプルな例えだがまさに字の通りの簡単で生々しい、純粋な恐怖だ。 「ふたりでここに居続けるのはダメなのか?」 「それは無理だよ。あと3日程で世界ごと消えてしまう。そうなればふたりして消える。」 「じゃあ、おれが先にいくよ。妹を守るのが兄の使命なんて言ったら馬鹿らしいけど、正直お前の為ならいい。」 どうせ夢だ、そう思っていた。しかし、その刀の矛先を見るとそれは夢でないという実感がした。 「だめだ、それだと私が兄貴を殺さないといけなくなるじゃないか。だから、私を殺せ。」 その目で今まで妹が過ごしてきた中で見てきた悲しみを、ずっと奥底で溜まっているのを感じた。 「おまえ、本当はもう、生きるのが嫌になったんだろ。お前は夢もなければ生き甲斐はまるでおれだけだった。いまでは友達と遊んだりしてるけど、それは寂しさを誤魔化してる。大体分かるんだ。」 妹は顔の形を崩す様に歯を食いしばった。 「違う!」 こんな妹だからこそ夢を見つけてほしい、それにおれは夢を叶える道を失った。これから何も出来ずに、60年も80年も時を削るのは辛い。お兄ちゃんの夢を貰って欲しい。だけど妹は一歩強く前にでてもう一度繰り返した。 「違うんだ……!!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加