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随分物騒な夢だと心の中で談笑した。
「もうひとりは他人なのか?」
「そうだけど、冷静だね。」
その声には少し震えを感じた。やけにリアルな怯えが感じ取れた。
「何回このゲームをしたんだ?」
口振りからしてこのことには慣れてることは分かる。
「そうだな、もう20回程になる。殺した数はもう少し多い。相手も弱いし、このゲームは勝てるんだ。まあそれも対象が兄貴でなかったらだけど。」
「それって、おれを殺さないと勝てないのか?」
「ああ、その通りだ。」
そのときおれはゾッとした。シンプルな例えだがまさに字の通りの簡単で生々しい、純粋な恐怖だ。
「ふたりでここに居続けるのはダメなのか?」
「それは無理だよ。あと3日程で世界ごと消えてしまう。そうなればふたりして消える。」
「じゃあ、おれが先にいくよ。妹を守るのが兄の使命なんて言ったら馬鹿らしいけど、正直お前の為ならいい。」
どうせ夢だ、そう思っていた。しかし、その刀の矛先を見るとそれは夢でないという実感がした。
「だめだ、それだと私が兄貴を殺さないといけなくなるじゃないか。だから、私を殺せ。」
その目で今まで妹が過ごしてきた中で見てきた悲しみを、ずっと奥底で溜まっているのを感じた。
「おまえ、本当はもう、生きるのが嫌になったんだろ。お前は夢もなければ生き甲斐はまるでおれだけだった。いまでは友達と遊んだりしてるけど、それは寂しさを誤魔化してる。大体分かるんだ。」
妹は顔の形を崩す様に歯を食いしばった。
「違う!」
こんな妹だからこそ夢を見つけてほしい、それにおれは夢を叶える道を失った。これから何も出来ずに、60年も80年も時を削るのは辛い。お兄ちゃんの夢を貰って欲しい。だけど妹は一歩強く前にでてもう一度繰り返した。
「違うんだ……!!」
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