【おまけ】目覚めを待つ

1/4
561人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ

【おまけ】目覚めを待つ

 意識がないままのランバートを宿舎に連れ戻し、医務室で処置がされた。とは言っても、その頃には大分体温が戻ってきて、しっかりと息をしていることが分かった。血清を早い段階で打てた事が幸いしたのだと、エリオットは言った。  それでもずっと、ファウストはランバートの側にいる。病室の中にはランバートとファウスト、二人だけだ。  ずっと肌に触れている。そうすることで恐怖が薄れたからだ。冷たい体に触れた瞬間の恐怖はまだ拭えない。瞳を閉じればあの時の光景がありありと浮かぶようだった。  やはり、この瞳が開かなければ眠れる気がしない。夢の中でまでこいつの死んだような姿を見る気がしている。  頬に触れ、髪に触れた。色を取り戻した肌が、くすぐられてほんの少し身じろぐ。そうした僅かな反応が、今は何よりも安心した。 「まったく、世話をかける」  言いながら、ほんの少し笑みが浮かぶのを自覚している。同時に、嫌ではないことも。 「もう少し俺を頼ってくれ」  頼りなく思わせてしまったかもしれないが、これは少し悔しかった。そして、自身が憎かった。結局は何もしてやれなかったのだから。 「早く、目を開けてくれ」     
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!