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「ハルさん、大丈夫ですか?その……」
「えぇ、心配ないですよ。こればかりは仕方ありませんからね。はい、珈琲。熱いので気を付けてくださいね」
ふたつ持ったうちの黒いマグカップを葉子さんの前に置き、私も向かいの椅子に腰を下ろしました。
白いマグカップの中で湯気を揺らめかせる珈琲の香りに鼻を近づけて、ひとくち。
「あら、そのカーディガン今年も着てくださってるんですね」
「当然ですよぉ。これはハルさんから頂いたクリスマスプレゼントですもん。しかも手作りですよ。もうどうしようもないくらい大きく裂けでもしない限り着続けますよ」
青色のカーディガンに袖を通した腕に視線を巡らせた葉子さんは「まぁ、裂けても捨てないですけどね」と満足気な笑みを浮かべてマグカップに口をつけました。
十月に入ってからというもの、昼間は随分と過ごしやすくなりました。
いざ寒くなってからでは、ずぼらな私は衣替えに間に合わない!と、今朝早くから葉子さんは衣替えをなさっていたようです。
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