1 初出勤!

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「おはよう、青池くん。今日からよろしく!」  社長さんの第一印象は、とにかく前向きで積極的。  判断が素早くて、頭の回転が速そう。  さすが旅館の後継者だけあるという感じ。これなら宿泊業の重い責任だってしっかり負って行けそう。  その社長さんに連れられて、さっそく建物の中の各セクションを案内してもらい、それぞれの担当者に紹介してもらう。  カフェのホール、厨房、レジと販売コーナー、トイレや休憩室、裏のゴミ捨て場、などなど。  しかし。  と、とにかく、移動速度、説明のスピードが速い。速すぎる!  メモを取るのも命がけだ。半分ぐらいしか書きとめられない。後で読めるんだろうか? というくらいの汚い字で。  これは……一度聞いただけで頭に入れて覚えるしかないということか? どれもこれも、すごく重要そうな事柄ばかりなのに?  もしかしたら、これからこんなスピードで、仕事が進んでいくということなのか?    ふと感じたその予想は、決して外れていなかった。    なにしろ、マニュアルがない。  メモをとる余裕もない。  次々と言われる重要事項。  しかもそこへ容赦なく割込んでくる、次の場所の説明。  というわけで、社長さんによる一通りの説明が終わった後は、頭の中がぐるぐるで、すでに足もクタクタだった。  
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