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「おはよう、青池くん。今日からよろしく!」
社長さんの第一印象は、とにかく前向きで積極的。
判断が素早くて、頭の回転が速そう。
さすが旅館の後継者だけあるという感じ。これなら宿泊業の重い責任だってしっかり負って行けそう。
その社長さんに連れられて、さっそく建物の中の各セクションを案内してもらい、それぞれの担当者に紹介してもらう。
カフェのホール、厨房、レジと販売コーナー、トイレや休憩室、裏のゴミ捨て場、などなど。
しかし。
と、とにかく、移動速度、説明のスピードが速い。速すぎる!
メモを取るのも命がけだ。半分ぐらいしか書きとめられない。後で読めるんだろうか? というくらいの汚い字で。
これは……一度聞いただけで頭に入れて覚えるしかないということか? どれもこれも、すごく重要そうな事柄ばかりなのに?
もしかしたら、これからこんなスピードで、仕事が進んでいくということなのか?
ふと感じたその予想は、決して外れていなかった。
なにしろ、マニュアルがない。
メモをとる余裕もない。
次々と言われる重要事項。
しかもそこへ容赦なく割込んでくる、次の場所の説明。
というわけで、社長さんによる一通りの説明が終わった後は、頭の中がぐるぐるで、すでに足もクタクタだった。
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