教えて、マスター

２ 気になるマスター

２　気になるマスターのこと

　仕事を終えてカフェを出たのは午後５時。
　２時半のランチタイム終了後も、食器の片付けや翌日のための調理材料、ドリンクの準備など、やることは山のようにあるんだ。

　ナイフ、フォーク、スプーンなどのシルバーは、全部洗って拭いて、翌日のために人数ごとにバスケットに分けてセットしておく。
　いろいろな在庫を確認、余った食材、賞味期限が切れしたものも処分して。
　スイーツは賞味期限が製造日限りのものがほとんどみたいで、

「青池くん、ハイ、おみやげだよ」
　沢田さんから、売れ残ったケーキを２個もらった。

　車に乗り込んでカフェを出てすぐに、空腹に耐えきれなくて、運転しながらもらったケーキを平らげてしまった。
　だって、言い訳になるけど、お昼休憩が午前１０時からの１時間なのだ。
　朝の準備を終えた後、ランチタイムの始まる前に、ほとんどのスタッフが一斉に休憩をとる。
　早朝５時半起きで、６時ごろ軽く朝食を食べてくるだけだから、１０時にはしっかりお腹がすいてて、賄いご飯のパスタとかカレーとかをペロッと食べられる。
　そうして、夕方になるともう、お腹がペコペコになってるというわけ。当然だよな。

　業務日誌を事務室の所定の場所に提出して、タイムカードを押し、勝手口から店の外に出たときには、山間の温泉地はもう日が暮れかかって薄暗くなっていた。