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そして歩き始めて間もなく、伊達から食事を誘われる。
「でも今日は、純粋に同僚として。
お互い、せっかくの金曜の夜に、一人ってのも寂しいからさ」
だが、これはもちろん断った。
そして彼も、ここは大人らしくすんなり引き下がる。
しかし最後に、さらりと食い下がられた。
「クリスマスまでは諦めないよ」
そして改札を抜けると、笑顔で手を挙げて未波と反対のホームへと歩いて行く。
はあ……。
しかし未波には、溜息しか零れない。
この数週間、正直なところ、伊達のアタックに気持ちは重くなるばかり。
おまけに、辻上に最後に会ったのは9月の初め。
それ以来は、二人のスケジュールが完全にすれ違って
互いに、元気でいることくらいしか確認ができていない。
あぁーあ、もうどうしたらいいんだろう。
一人になった帰り道で、気付けばブツブツと胸の内で呟いている独り言が、
この日も、知らない内に浮かんでくる。
ところが、零れ続ける彼女の溜息は、アパートを少し前にきれいに消え去った。
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