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「うん」
ベンチから引き起こされる。
アスレチックでさんざん宇城くんに手助けしてもらったから、手をつなぐことへのハードルがぐっと下がっているんだ。
宇城くんは、そのまま手を離さなかった。
引き上げてくれただけじゃなく、ロッカー室に急ぐ間もずっとわたしの手を握りしめ続けていた。
お願い。無駄な期待をさせないで。
あなたの心の奥の、ずっと底にある感情がなんなのか、わたしはもう知っている。
だからどうかこれ以上期待はさせないで。
我ながら矛盾だらけだなと思う。
今日一日だけはお姫様でいたいなんて願ったくせに、ちょっと踏み込んだ行為をされると勘違いしてしまいそうで怖くなる。
今度は期待させないで、と念じる。
自分の中で、抑えても抑えても湧き上がってくる期待が怖い。
とってもとっても怖いよ、宇城くん。
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