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わたしの手をひき走ってゆく無駄な肉のない背中。
冷えて硬い武骨な手のひら。
水浸しで貼りついたTシャツのせいで、はっきりわかる筋肉の動き。
わたしにとって。
全てがどうしようもなく。
男子だった。
売店で、お互い下着だけは買った。
男子のハーフパンツだか水着だかがラックにいくつもかかっているのを横目に、宇城くんに背を押されるようにして更衣室に向かう。
宇城くんは自分のリュックからバスタオルを二枚取出し、そのうちの一枚を渡してきた。
「使わないですむならそれに越したことはないと思ってたけどよ」
いたずらっ子みたいに片側の口の端をあげて笑う。
わたしったらそんな彼にもときめいてしまうという……もう完全に末期だ。
硬い表情でお礼を口にし、バスタオルを受け取る。そこからは男女分かれて更衣室に入った。
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