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「……ちがうよ」
「ん?」
「楽しかった。わたしもここに来たかった。無理に連れて来られたわけじゃないもん」
宇城くんは鼻で笑うようなシニカルな表情をした。
こういう顔は、彼にしては珍しく……ううん、初めて見るものかもしれない。
「池ドボンしたのに?」
「うん。楽しかったよ。すごくすごく楽しかった!」
意地になったようにそうくり返すわたしに、宇城くんの唇から皮肉っぽい笑みが消えていく。
「波菜が池にはまるかもな、ってそれ前提で俺、服まで買ってたんだぜ?」
「わたしが池に落ちたら助けるつもりで、自分の服も買ってるじゃない」
即答するわたしに宇城くんはかすかに戸惑い、一瞬黙る。
「波菜どうした? 今日はやけに強気じゃんか」
更衣室を出てすぐの緑の多いコンコースで、ペアのTシャツを着た男女が、対峙して真顔で喋っている。
道行く人の好奇の視線がプスプス刺さるよ。
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