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静かじゃない中で、前を向いたまま宇城くんはかすかな声でささやいた。
「俺がさ、前に大量に送った自撮りって、どうした?」
不思議と宇城くんの声は聞き取れた。
「持ってるよ。決まってるじゃない」
「そっか」
そこから宇城くんはもう口を開くことはなかった。
暮れかかり、西の空だけが鮮やかな赤い光を放っている。
重なり合う葉のふちから漏れだす鋭い輝きは、まるでルビーのようだ。
わたしは来た時よりも、ずっと宇城くんの近くを走ることができるようになっていた。
わたしたち二人に寄りそう沈黙が優しいのは、きっと気のせいなんかじゃない。
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