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防風林の松林にできている宇城家の別荘へ続く小道。
そこまであと少しというところで、パスンという不穏な音がして前をいく宇城くんの自転車が大きく傾いた。
倒れる寸前に宇城くんはさっと降り、自転車を支える。
わたしも急ブレーキをかけて追突しないように止まる。
「どうしたの?」
「パンクだな。なんか踏んだっぽい」
「そうか。ここまでたどり着いててよかったよね」
「マジだな。遠かったら悲惨もいいとこだったぜ」
わたしと宇城くんは自転車を引いて歩き始めた。
宇城くんが前でわたしが後ろ。
別荘が多いから車はそれほど通らないけど、公道を自転車二台を並べて歩くのは危なかった。
別荘まで歩いても十分はかからない。
ほんとに不幸中の幸い。
前から、ヘルメットまでかぶったフル装備のロードバイクが走ってきた。
わたしたちの使うママチャリとは違う走行性の高い自転車だ。
宇城くんがその人に道を開けるように林のほうに寄った。
わたしもそうした。
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