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わたしたちとそのロードバイクがすれ違ってから、すぐ後ろで、キュッとブレーキがかけられる音がした。
「もしかして、……波菜?」
「えっ?」
自分の名前を、こんな知り合いなんかいないところで呼ばれて仰天した。
「やっぱり。俺だよ。洋介」
その人は、ロードバイク用のヘルメットをとった。見知った懐かしい顔が現れる。
「……洋くん」
ここの別荘地の駅を降りた時、洋くんを見かけた気がした。
やっぱりあれは洋くんだったのか、とわたしは身をかたくした。
洋くんは道の端に自転車を止めてつかつかとわたしのほうに歩いてきた。
「駅で波菜と奏っぽい子を見かけたんだよね。友だちが一緒だったし、波菜たちも大勢で遊びに来た雰囲気だったから声、かけなかった」
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