◇◇◇◇◇3. おもちゃのチャチャチャ◇◇◇◇◇

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「わたしも……洋くんかな、って一瞬思ったけど。こんな関係ない場所で、しかも地元っぽい友だちも一緒だったでしょ? 地元の高校生かと、思った」 「俺、小学校の入学前はこのへんに住んでたから幼なじみがいるんだよね。別荘あるし、親の実家があって親戚も多いの。何年かに一度は帰ってた。昨日だよな? あいつらと映画見に行った」 「そうだったんだ」 「波菜、今、楽しそうだね。高校の友だち? 彼氏、だとか?」  洋くんは宇城くんのほうに視線を移した。 「こんちは。波菜の高校の友だち、宇城です。このへんの別荘にみんなで遊びに来てて、俺と波菜は買いだし係」  宇城くんが笑顔も浮かべず自分たちの関係を簡潔に説明した。 「篤嶋洋介です。波菜の幼なじみ。親同士が仲良くて今でも行き来はあるよ。奏の家ともね」  わたしが紹介するまでもなく、お互い勝手に自己紹介をし合っていた。 二人ともかなりフレンドリーなほうだと思うのに、二人ともに笑顔がなかった。  今ここで、こんなタイミングで、洋くんに会いたくなかった……。
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