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「波菜行こうか。みんな飯、待ってるぜ」
「そうだね。じゃあ、あの……洋くん、また機会があったら」
「おう、またな。波菜」
宇城くんが帰ることを切り出すと、至極あっさりと洋くんはロードバイクにまたがった。
走り始めてから一度振り向き、軽く片手をあげてから去っていった。
わたしは複雑な気持ちで後ろ姿を見送った。
洋くんと、ごく普通に、何事もなかったかのように会話ができたのに、そのことをそれほど喜んでもいない自分に驚いていた。
もう、ぜんぜん恋愛感情は残っていない。
幼すぎて、あれが恋愛感情と呼べるものだったのかどうかも、今となってはわからない。
ただ一つ、洋くんはわたしに大切な勉強をさせてくれた。
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