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パンクをして洋くんに出会うまでの、言葉はなくても満ち足りていた宇城くんと二人の帰り道。
一瞬のみごとなグラデーションで、空気の色が優しいピンクから重苦しい鉛色に変わってしまった。
わたしが話さなくなったからか、宇城くんも何も言わなかった。
さっきまでとは真逆だ。
今の沈黙はどうしてこんなに苦しいんだろう。
沈黙って案外雄弁なんだな、なんて……こんなところで二律背反の発見。
「やっだー! やっぱり二人、そういうことになっちゃったんだぁー?」
空気を読まない能天気な声があたりに響いた。
「はい?」
別荘の自転車置き場で奏とでくわした。
手に濡れた水着を持っていたから、今日の海水浴で使ったそれを裏庭に干しに来たんだろう。
奏のいう「そういうこと」にはすぐ思い当たった。
わたしと宇城くんがペアのTシャツを着ていたからだ。
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