◇◇◇◇◇3. おもちゃのチャチャチャ◇◇◇◇◇

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だけど宇城くんだから。 宇城くんの口から出たそのセリフは、いつだって埋もれた記憶と化学反応をおこして槍の形に変わるんだ。 わたしの心はいままでだって充分引き裂かれてきたよ。  でもわかっていることだし、期待もしていない。 心の耳をひたすら閉ざし、その言葉をシャットアウトする。そんなことができないほど子供じゃない。 もう慣れっこだ。  だけど今は。今だけは、 「おもちゃじゃない……」  無理だった。 「は?」 「わたしはおもちゃなんかじゃない!」 「波菜? ……え……?」  叩きつけるように叫んでから、宇城くんを正面から睨みつけた。 いままでだってさんざん同じセリフを口にしてきたのに、わたしがいままでとはまるで違う反応をするから、宇城くんは眦がさけるほど目を見開き、凍りついた。
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