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涙があふれてきそうになって、わたしは慌てて顔をそらした。
踵を返し、その場から走り出す。
「波菜待って! 待ちなさいってば!」
奏の言葉が追ってくる。
自分がどこをどういうふうに走っているのかわからない。
「待って波菜」
わたしの腕が掴まれる。
全力疾走なんか、体育祭の時くらいしかしない文科系女子が、バスケ部キャプテンの足にかなうわけはなかった。
「か、奏」
わたしはようやく自分を取り戻し、止まろうとしてたたらを踏んだ。
過呼吸になりそうで、両膝に両手をついて肩で息をした。
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