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わたしは、完全にその頃、「おもちゃみたいでかわいい」というセリフを自分に都合のいいように解釈してしまっていた。
その頃爆発的な人気を誇ったコケティッシュなアイドルのキャッチコピーが「愛すべきおもちゃ」だった。
おもちゃとは、人から愛される存在。
あれは小学校五年の後半。
洋くんの家で長く飼っていた犬のマリモが亡くなった。十三歳まで生き、老衰だったのだと後から聞いた。
見たこともないほど洋くんは打ちひしがれた。
ご飯も食べなくなった。
幼い頃、洋くんにはマリモだけが友だちという時期があったのだ。
洋くんの近くにいることしかできない自分が情けなかった。
少しでも悲しみを取り除きたい一心で、
「わたしがいるよ。洋くんにはずっとわたしがいる」
と告げてしまったのだ。
それが、われ知らずした人生初の告白。
結果から言うと、完全なる玉砕。
わたしの恥ずかしすぎる勘違いとして幕を閉じたのだ。
洋くんは不思議そうに眼をまんまるにして、それから、それはできないよ、と顔をそらした。
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