第1章 残念王子に奇跡の再会

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試験開始から十分が経ったころ、わたしは隣の男子の異変に気づいた。ごそごそと身動きをする音が、静まり返った会場に響く。 顔をほんの少し傾けて確認すると、どうやら何かを探しているようだった。 ペンケースの中身を全部出したり、プリント類をどけてみたりしている。 消しゴムだ……。 わたしは予備に持ってきていた消しゴムを自分のペンケースの中から取り出し、握りしめた。 困っている。 どうしよう。 この模試だって大事な判定材料になる。 これがあればあの子は助かるはずだ。 でも……。  わたしが机の上に置いた消しゴムに手を乗せ、首をかしげていると、ふいに動きを止めたその子がこっちを向いた。わたしの顔から、机の上の消しゴムに視線が落ちる。
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