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どこにそんな勇気があったのか、今となってはまるでわからない。
なにかに導かれるように、声を出さずに唇だけが動いた。
〝いくよ〟
男の子が大きく目を見開く中、あたしは消しゴムの上に置いた指を動かした。
消しゴムが長机の上を滑っていく。
その子はかなり軌道を外したそれを器用に受け止める。
その格好のまま、まだびっくり眼(まなこ)でわたしを凝視していた。
わたしは問題用紙に視線を戻し、長文の続きにとりかかった。
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