第1章 残念王子に奇跡の再会

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「ちょっと君たちこっちに来なさい」  試験監督からそう告げられたのは、その教科が終わった時だった。 後ろにいた試験監督に、わたしが消しゴムを滑らせたところを見られていたらしい。 試験中に声をかけなかったのはたぶん他の生徒への配慮だ。 「なんすか? この消しゴムのこと? 俺が消しゴムなくて困ってるのを見かねて、隣の席のこの子が貸してくれただけっすよ」  硬直して言葉が出ないわたしに対して、その男子はなんの気負いもなく釈明していた。 「いいから来なさい。ここで話すと他の生徒の迷惑になる」 「試験が全部終わってからじゃダメっすか? 解答なんてかなり違ってるはずだし、第一俺たちは初対面だ。これじゃ親切心で貸してくれたこの子にめっちゃ迷惑かかるじゃないっすか。この消しゴムに細工もないっすよ。調べてください」
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