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その男子は試験監督を前に臆することがなかった。
「いいだろう。二人とも最後まで試験を受けなさい。その後話を聞かせてもらう」
そう言い放つと試験監督はわたしたちに背を向けた。その背に男子が言葉を投げる。
「すいません、消しゴム貸してください。俺、忘れたんで」
「……教卓の前まで取りにきなさい」
呆れたようなあきらめたような声音で、試験監督が応じた。
「ごめんな、あと、ありがと」
教卓に向かう前、その男子は、わたしのほうをちらっと見てそう囁いた。
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