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「ねっ! 波菜、行こうよ」
学校の廊下で奏がわたしの片腕に抱きついてぶんぶんと振り回す。
「そうだよー、こんなとこに泊まれるチャンス、二度とないかもー」
凛子がパンフレットと見まがう立派な冊子を開いて、中の写真にうっとりと見惚れている。
個人所有の別荘の案内冊子とは誰も思わないだろう。
宇城家の持つ豪華絢爛な別荘だ。
業者でもないのに案内冊子があることにびっくり!
きっと親の会社関係の接待に使ったりするからなんだろうな。
「ねっねっ波菜お願い!」
奏は両手を合せてわたしを拝むポーズをする。
「う……」
凛子が両手で開く冊子には、童話の中から抜け出てきたかのような白亜の豪邸が映っている。
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