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たとえ、本人さえ気づいていない嫌悪感を抱かれているんだとしても。
奇人だの変人だの野獣だのいろいろ言われている。
確かに彼は変わっている。
でもそれは宇城くんの人気あってこその通り名だ。
地味で大人しくてなんの取り柄もない。
たまに出過ぎたマネをすれば裏目にでる。
当たって砕け散る権利もないわたしとじゃ、まるでつりあわない。
試験会場で消しゴムを貸した勇気を、苦手意識の強い〝男子〟から称えられ、自分の中で確実に何かが変わった。
その子に高校で再会した。
消しゴム事件で親と確執の残るケンカを彼にさせてしまったと知った時には、もう想いはスタートラインを通過した後だった。
引き返すことはできなかった。
あの事件が親との確執になったことをわたしが聞いてしまったことを知らない彼に、今さら面と向かって謝ることもできないけど。
ごめんね、宇城くん。
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