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こんなことになるとわかっていれば、ここに来る前に死ぬ気でダイエットしたのにー。
「俺らは一日中目の前の海で泳いでっからさ。朔哉たちも一日かけてゆーっくり買い物してこいよ。夕飯づくりからどうにかしてくれればそれでオッケーだからさ。もう七時でも八時でもぜんぜんいいから」
多田山くんが自転車にまたがる宇城くんにそう声をかける。
「じゃ、遠慮なくそうするわ。デートだぜ波菜! ラッキー」
「う、うん……」
自分の首筋に血がのぼるのがわかる。七時とか八時なんて……そんなに遅くていいのかい。
デートだぜ、宇城くんラッキー!
宇城くんみたいにふざけて口に出したりできないわたしは心の中でだけそう叫んだ。
うん、って素直に答えられただけ自分の中じゃ大金星なんだから!
別荘の裏手はこじんまりした防風林の松林。
木の下には雑草の群生もすごかった。
夏、まっさかりの緑に輝く林道を、宇城くんと自転車で二人乗り。
夢じゃないかと思う。
「おうっ?」
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