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「うわきゃっ」
走り始めて一分。
手を振るみんなが見えなくなったころ、石に乗り上げて自転車が大きく傾いた。
サドルの下を掴んでいるだけのわたしの身体は、宇城くんの背中からぶわっと離れて放り出されそうになった。
気がついて宇城くんが慌てて自転車を止める。
「そんなとこ掴んでるから落ちそうになんだよ。もっと力入れて腹に手ぇまわせ!」
宇城くんがわたしの手首を握るとそれを引っ張って自分のお腹にまわさせる。
「えっ……」
「けけけっ! 波菜超真っ赤。もうその真っ赤になるおもちゃっぽいとこがたまんないんだよなー」
宇城くんは振り向くと、うつむいて頭から湯気を出すわたしをからかってきた。
自棄気味の、謎の勇気がわいてくる。
これも夏の魔法かな。
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