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まだ真っ赤なはずの顔をあげ、唇を尖らせると宇城くんをにらんだ。
わたしだって怒る時は怒るよ。
あんまり舐めないでほしい。
「これでいいんだね!」
まだこっちを向いている宇城くんのお腹を、力を入れて両手で抱きしめる。
いきなりのわたしの行動にびっくりしたのか、きつく締めすぎて息がつまったのか、宇城くんはわずかに唇をあけて眉間にしわを寄せた。
黙り込み、前を向く。
その瞬間に見せた横顔は、何かに耐えるようなひどく苦しそうなものだった。
いつもふざけてばかりいる宇城くんの見たことのない表情に、わたしはあわてて手をひっこめた。
そんなに、苦しかった?
……それとも嫌だった?
「……だから、ちゃんと掴まってないとあぶないだろ」
呟くようなその声音に、さっきまでのからかいの調子はみじんも含まれていない。
初めて聞く宇城くんの低くかすれた、重い声。
心臓がドキドキと急に主張を始める。
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