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「うん……」
二人乗りでよかった。
今のわたしの顔を見られなくて本当によかった。
ありえないほど熱くなっていく頬や首筋に、もしかしたらユデダコどころじゃすまないのかも、とひたすら下を向いていた。
力を入れて腹に手をまわせ、だなんて言われたけど、ひかえめに脇腹のあたりのシャツを掴むのが精いっぱい。
胸の高鳴りもいっこうに止んではくれない。
そうこうしているうちの短い松林は終わった。
奥には宇城家の別荘しかないケモノ道のような私道から舗装道路に出る脇に、物置小屋が立っていた。
宇城くんが鍵を開ける。
そこには錆がところどころ浮いた自転車が一台、放置するように置いてあった。
動かすと金属の軋む音がする。
「こんなんでもマジであってよかったわ」
「ほんとだね」
公道二人乗りは違反だ。
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