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宇城くんがそっちの自転車に、登山用のリュックをわたしから受けとってまたがる。
わたしは宇城くんがここまで運転してきた自転車のハンドルを握る。
「ちっさい店ならあと十分くらい走ればあるんだけどさ。そこじゃなくて、ショッピングモールに行こうと思うんだけど、波菜イケるか? たぶん三十分くらい走る」
「うん。大丈夫だよ」
まだまともに宇城くんの顔を直視できなかった。
一度意識してしまうとどうにもいつもの通りにするのが難しい。
考えてみれば、学校でも校外でも二人っきりなんて初めてだ。
わああああ!
考えてみれば、じゃない。
意識しちゃっているのに、このうえ考えたりするんじゃなああーい!
わたしのばか!
ばかばかばか!
車の少ない林間の舗装道路をゆくこと三十分。
このあたりは別荘地みたいで、たまに宇城家のような豪華な邸宅があるものの、そこに生活の匂いはなかった。
だからこんなに最寄りのお店までが遠いのか。
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