「ハナコサン」を探してはいけない

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「ハナコサン」を探してはいけない

「ところで夏の学校怪談特集の件なんですが」  ホラー専門誌「幽怪」の編集者が私に電話を寄越したのはまだ薄寒い風の吹く四月の初めのことだった。 「ひとつ面白い話を聞きましてね、ぜひ取材をお願いしたいんです」  しがない女ルポライターの私はこの雑誌に何度か記事を寄稿している。だいたいは心霊スポットの取材だった。とは言っても大抵は何も起きないので、いつもかなり話を盛るのだ。  写真は何も写ってなければ加工してもらって怪しげな女の影やらオーブっぽい光を入れてもらう。何だか詐欺みたいな仕事だが、もともと霊感などというものは持ち合わせていないし、それで読者が怖がってくれるのなら構わないと思っている。だからと言って霊を信じていないわけではない。たまには理解不能なことも起こるからだ。 「なにそれ。トイレの花子さんとか、そういうの?」  今、私がスマホで話をしている場所は古き良き佇まいの喫茶店の一番奥の席。比較的空いていて古いジャズが流れるこの店で毎日と言っていいくらいコーヒーを飲みながら情報収集や取材のまとめをしている。     
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