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コンピューター室は部活では滅多に使わないし普段は鍵が掛かってるから人の出入りもない。
しかし、この時は鍵穴に鍵が差し込まれた状態だった。
…なんでだ?
ドジな先生もいるんだなと鍵を引き抜き職員室に返そうと思っていたら、足音がすぐ近くまで聞こえてとっさにコンピューター室に隠れた。
鍵を閉めてカーテンも締め切られた薄暗いコンピューター室の奥に行こうとして何かにつまづいた。
手と足に鋭い痛みが走り倒れたまま痛くない方の手で口を押さえた。
静かなコンピューター室では息遣いも響きそうな気がした。
やがて足音が遠退きホッと一安心してコンピューター室から出ようと立ち上がろうとする。
ジャリという音に痛みが走り短く呻きなんとか立ち上がり移動する。
あちこちが痛い、それになんか流れる感じがする。
痛む手をペロッと舐めてみると鉄の味がした。
…これ、血?
もしかしてと思い手探りでスイッチを見つけて痛くない手で付ける。
床には花瓶の破片が散乱していた。
そしてなにか事件が起きたような血痕が所々にあり自分のいる場所まで続いていた。
足は靴下が赤黒くなっていて手はぱっくりと傷が開いていた。
血だらけな自分を見るのが嫌でまたスイッチを消した。
怖い、怖い、痛い。
震える体を抱きしめてその場で小さくなる。
また足音が聞こえる、怪我のまま出ていったらもう逃げられない。
先生が来るまで待っているか、いや…鍵を差したまま忘れる先生だから気付くのが遅そうだ。
ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。
取ろうと思ったら手が滑り、スマホを落としてしまった。
慌てて拾い、画面を見てポロッと涙が流れた。
「…犬塚、くん」
その名は暖かな太陽のような彼を思い出した。
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