285人が本棚に入れています
本棚に追加
ー佐助視点ー
犬塚くんとの電話を切り、長く感じる時間をジッとして待つ。
暗い…暗闇は嫌いだ、母親と住んでいたあの家を思い出す。
いつも帰ると電気は消えていて数日帰ってきていない事が分かる。
保存食のカップラーメンを作ろうと手探りで棚を探す。
電気は払ってないから付かない。
お湯はいつも近所の優しいおばさんにもらっていた。
棚から何のカップラーメンか分からないものを取り出し、家に帰る前におばさんにもらったお湯が入った水筒を蓋を開けたカップラーメンに傾ける。
しばらく待ち、暗い部屋で食事をする。
これが日常だった…嫌な思い出…
それから母親は男といなくなり、バイトを出来る年齢になったから電気代を払い部屋は明るくなった。
今でも暗い夜は怖くて丸まって寝ている。
カップラーメンの味も分からないあの部屋の事なんて、思い出したくもないのに…
頭を抱える…血が髪にべったりと付くのも気にせず小さくなる。
…俺を、その笑顔で照らしてほしい…犬塚くん。
「………先輩?」
ガラッとコンピューター室の扉が開き、逆光で顔が見えないがすぐに彼だと気付いた。
照らされた部屋で血だらけな俺を見て慌てて駆けよろうとする。
すぐに床にまだ花瓶の破片が落ちてる事に気付いた。
「き、来ちゃだめっ!!」
「えっ…」
犬塚くんは驚き足を止めた。
俺が花瓶の方を見てるのに気付き視線を下げて納得した。
そして器用に踏まないように飛び越えて俺のところに来た。
「先輩、血が…どうしたんですか!?」
「ちょっと花瓶の上に転んじゃって」
「保健室行きましょう!」
そう言った犬塚くんは俺をお姫様抱っこして花瓶に気をつけてコンピューター室を出た。
するとちょうどタイミングよく鍵を忘れて戻ってきた先生と会い、説明を求められたから軽く説明して鍵を返した。
最初のコメントを投稿しよう!