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ガッと拳に衝撃が走り相手を殴りつけた。
よろよろと相手はよろめき地面に唾を吐いた。
かなり一撃が効いたのかすぐに反撃が出来るほどの力はなかった。
一歩踏み出すと警察のサイレンが聞こえた。
相手は地面で気絶する仲間をほっとき走り去ってしまった。
騒ぎを見た近所の人が通報したのだろう、狭い路地裏にパトカーが止まり道を塞ぐ。
静かな路地裏にサイレンと舌打ちが響いた。
「そこのお前、こんなところで何をしている!」
パトカーから警官が数人取り囲む。
全く自分の話を聞く気はないんだと目を見てれば分かる。
何も知らないくせに見た目が悪そうだからと決めつける。
そんな大人に何を言っても無駄だと思い諦めて壁に寄りかかる。
罵倒が聞こえ、耳を塞ぎたくなるほどうるさい。
…もう、どうでもいい。
「違います」
俺をパトカーに押し込むために肩を掴んでいた警官はその場に合わない冷静な声に驚いていた。
こんな不良を助ける奴がいるとは思えず俺も声がした方向を見つめる。
そこには俺とあまり変わらない年齢の男と見覚えがある男が影に隠れて怯えていた。
「その人は正当防衛だったんです、彼が不良にカツアゲされてたから助けたんです…なのに何も聞かず逮捕しちゃうんですか?」
見た目とは違いちゃんと意思がある言葉にその場にいる誰もが口を挟まなかった。
結局俺はただの注意だけで済み、面倒な事にはならなかった。
まさか怖くなって逃げたカツアゲされてた奴を捕まえて連れて来るとはな。
土下座されそうになって久しぶりに慌てた。
「…一応礼を言っとく、サンキュー」
「あの場所、家から近道だったから邪魔だっただけです」
「ふはっ!」
なんか面白くて笑った。
平凡な男は首を傾げながら道を並んで歩く。
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