本編

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するとそこには犬塚くん達と一緒にいたもう一人の少年がいた。 なんで俺の名前を知ってるのか分からず驚いた。 とりあえず頷くと少年が目を細めた。 「…ちょっと話があるんだけど、いい?」 「えっ…はい」 後輩だが、何だか敬語になってしまい俺を通り過ぎていったから着いていく。 その間、ずっと無言で居心地が悪かったが話す話題もないから仕方ない。 そして着いたのは校舎裏…よく縁があるなぁと思いながら少年を見つめる。 何処かの親衛隊でもなさそうだし、いったい俺に何の用なんだろう。 「…なんかあったの?犬塚と」 「え、なんで?」 なんで知ってるのだろうか、もしかして犬塚くんがなにか言ったのかな? 不安そうな顔をすると少年はため息を吐いた。 少年は犬塚くんを心配してるようには見えず、何故犬塚くんを気にするのか不思議だった。 「なにかあったか知らないけど、犬塚が最近涼志に構って迷惑なんだよ」 彼は進藤が好きなのだろうか、でもなんで犬塚くんがいきなり進藤に構い出したのか分からない。 …もしかして、犬塚くんも進藤の事を…? 進藤を好きな人はいっぱいいるからな… 「だからさ、早く仲直りなりしてよ」 「お、れは…何も」 犬塚くんが選んだ人なら何も言えないし何も出来ない。 …俺にはその資格がないから… 再び下を向くと少年は舌打ちした。 「なんかムカつくな、お前…」 壁に寄りかかっていたらガッと顔の真横の壁を殴られてビクッとなる。 さっきまで普通だった筈なのにいきなり豹変して驚いた。 俺を睨む少年に他の親衛隊みたいな雰囲気を感じた。 …根暗な俺は人をイラつかせているのだろうか。 「…何その顔、いじめて欲しそうな顔だね」 「うっ、ぐ…」 胸ぐらを掴まれて苦しくなる。 ただ、平和に暮らしたいだけなのに…なんで上手くいかないんだろ。
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