本編

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だいぶマシになったがまだ傷が完治してなくて包帯に気付いた少年は包帯が巻かれた手をギュッと握る。 相当なドSだと鋭い痛みに涙目で耐えながら思った。 「東金先輩!!」 何処からか声がして、息苦しさがなくなりよろけて地面に座った。 なにが起きたのかすぐに理解出来なかったが目の前に犬塚くんがいるのは分かった。 犬塚くんに殴られたのか少年はじめんに倒れていて、腫れた頬を抑えながら立ち上がる。 「先輩に手を出すなら俺は容赦なくお前を潰す!」 「…お前がっ、涼志に手を出そうとするから…」 「………そんなわけねぇだろ」 犬塚くんが呆れた声を出す。 少年はまだ犬塚くんを疑っていて、犬塚くんは俺に手を差し伸ばして立たせてくれた。 肩を貸してもらい歩き出したと思ったら一度少年を見て口を開いた。 「俺、この人しか愛せないから今後変な勘違いすんなよ」 その瞳はとても真剣で少年も何も言えなくなり口を閉ざす。 とりあえず話し合うために犬塚くんの家にやってきた。 初めて他人の家にお邪魔する事になり、さらに好きな人のだから緊張する。 …犬塚くんの言った意味ってやっぱりそういう事なのかな? 本人の口から聞くまで信じられなかった。 なんで、俺を避けてたのか…とか…たとえ俺が傷付く内容でも聞かなきゃいけないと思った。 「今日、家に誰もいないから」 「えっ!?あ、うん…そうなんだ」 俺の気持ち知ってるならなんでそんな期待させるような事を言うんだろう。 …犬塚くんがよく分からない。 犬塚くんの家は普通の一軒家だった。 誰もいなくても「ただいま」「お邪魔します」を言う。 静まった家だが、環境が違うだけで俺の家とこんなに違うのかと不思議に思っていた。 二階に上がり犬塚くんの部屋に入る。 そしてすぐ閉めた。 「…そうだった、今日先輩呼ぶ予定じゃなかったから部屋が汚かった」 「犬塚くん?」 「ち、ちょっと待ってて下さい!すぐ終わりますから!!」 そう言った犬塚くんは一人部屋に入ってしまった。
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