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自慢じゃないが、記憶力はいい方だ。
確か、俺が一年の時出会った犬みたいな名前の子だ。
名前は犬塚くん。
まさか同じ学園だと知らず犬塚くんが数人の男達を殴り飛ばしていたから慌てて止める。
勘違いかもしれないが、結果的に俺を助けてくれたのに他の人が見たら勘違いする。
「犬塚くん、もういいよ…ありがとう」
「……先輩がそう言うなら」
俺の言う事聞いてくれるか分からなかったが犬塚くんは素直に拳を下ろしてくれた。
呻き声を上げて地面に倒れていた体を起こそうとする男達を見て犬塚くんは俺の手を引き走り出した。
引きずるようではなく、俺の走りに合わせてくれてやっぱり優しいなと微笑む。
非常口の階段を上り、もう追ってこないのを確認して息を切らして座る。
「はぁはぁ…」
「大丈夫ですか?先輩」
「…う、ん」
体力がなさすぎる自分が恥ずかしくなる。
あんなに走ったのに犬塚くんは息一つ切らしていない。
…なんか悔しい。
遠くの方で教師の声がする。
あの場面を見られたら被害者とか関係なく全員加害者にされていたかもしれない。
また助けられたみたいだ。
「先輩、何があったか話してくれますか?」
犬塚くんは何も知らず助けたが、やっぱ気になり聞いてきた。
犬塚くんを巻き込んでしまったような気がして、正直に全て話した。
無言で聞き話し終わると大きなため息を吐いた。
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