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冬のある日ののんびりとした午前中、突然勇者様が出掛けたいとおっしゃった。
すると勇者様のそのお言葉をお聞きになった魔法使いのお嬢様が、私も一緒に出掛けるとおっしゃって、となれば、残るは遊び人様。
いかがします? とお尋ねすれば、一緒に行かないわけにはいかないだろうねと、ややめんどくさそうな様子ながら、遊び人様は腰を上げられる。
さて、そうと決まれば、ご一行様の防具屋を務める私めは、ご一行様が外で出会うだろう敵を考え、どの敵にも負けない最強の防具を揃えなければいけない。
せっかちに、早く出掛けたいとおっしゃる勇者様と魔法使い様に、少々お待ち下さいと言いながら、これとこれとこれでいいかしらと防具を選びだし、勇者様と魔法使い様にはそれらを身につけるお手伝いまでする。
ご一行様に並んでいただき、出掛ける前の最終チェック。勇者様よーし、魔法使い様よーし、遊び人様……
「マスクをお忘れですよ、遊び人様」
そう言うと遊び人様はお笑いになり、「何、遊び人って」と。
「午後はパチンコに行くんでしょう? だから遊び人様なの」
ふふっと笑って遊び人様にそう申し上げ、それから遊び人様にお頼みする。
「子どもたちをお願いね」
外の寒さに負けず、小さな異物の侵入も許さない最強装備を身につけられたご一行様が、近所の公園に行かれるのを玄関にてお見送りすると、私は部屋に戻って腕まくり。さあ、ここからは宿屋の女主人だ。
「いまのうちに掃除をしちゃいましょう」
そう自分に向かって言うと、その手始めに、リビングのカーペットの上に出しっぱなしにしてあった、ボタンを押すと音と光が出る勇者様の剣と、魔法使い様の魔法の道具を元の場所へと片づけた。
-終わり-
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